導入から2ヶ月後、田中さんが病棟を訪問すると、一人の若いスタッフがシステムを使いこなしていました。
他のスタッフが手こずっている操作を、迷いなくこなしていました。画面の切り替えも、データの入力も、まるで前から使っていたかのようでした。
「すごいですね、どうやって覚えたんですか?」と田中さんが聞くと、「なんとなくいじってたら覚えました」と答えました。
「他のスタッフにも教えてもらえますか?」と田中さんが続けると、その人は少し考えてからこう答えました。「聞かれたら教えますけど、私がリーダーというわけでもないので」。
現場には、こういう人がいます。組織図には載っていない。でも定着の鍵を握っている人が。
非公式リーダーとは何か
組織図には載っていませんが、現場には必ずこういう人がいます。DXやICTに物怖じせず、新しいシステムをすぐに使いこなせる人です。
多くの場合、比較的若いスタッフです。研修を受けなくても、自分でいじりながら習得してしまいます。周りが手こずっている操作を、自然にこなしています。
でもこの人たちには、共通した特徴があります。自分から積極的に教えようとしないことです。上の人が使えていなくても、「教えてほしい」と言われない限り動きません。リーダーシップをとることもありません。立場上、そうする理由がないからです。
また、権限のある操作しか触れないという制約もあります。システムの管理や設定変更は、特定の権限を持つ人しかできません。その権限を持つ人がシステムに不慣れな場合、非公式リーダーがどれだけ使いこなせていても、できることに限界があります。
そして最も見落とされがちなリスクがあります。この人が異動や退職でいなくなったとき、一気に現場が滞ることです。「あの人がいたから回っていた」という状態は、定着とは言えません。本来であればシステムを管理する部署に現場を知る看護師がいることが理想ですが、そこまでの余裕がある病院はなかなかありません。
非公式リーダーをどう見つけるか
非公式リーダーを見つける前に、まず師長との関係を築くことが必要です。師長の承諾なしに現場を動かすことはできません。師長がどうしたいのかを理解し、師長の意向に沿ってシステム導入を進めることが大前提です。
その上で、師長に聞きます。「システムに詳しいスタッフや、新しいことに積極的なスタッフはいらっしゃいますか?」。師長は現場を最もよく知っています。誰が習得が早いか、誰が周りを引っ張れるかを把握しています。
師長から非公式リーダーを紹介してもらうことで、その人の現場での立ち位置も見えてきます。師長公認で動いてもらえるようになります。「聞かれたら教える」という受け身の姿勢から、「師長から頼まれた役割」という形に変わります。
非公式リーダーを見つけることは、定着の鍵を見つけることです。でもその前に、師長との信頼関係を築くことが、全ての出発点になります。
では何をすべきか
非公式リーダーを見つけたら、次は師長とその人をつなぐ橋渡しをすることです。
「このスタッフがシステムをよく理解されていて、周りへの浸透に力を貸していただけそうです」と師長に伝えます。師長が認識することで、非公式リーダーが動きやすくなります。「私が頼まれた役割だ」という意識が生まれます。受け身だった姿勢が、少しずつ変わっていきます。
その上で、その人を巻き込んだ運用設計をします。「現場でこのシステムをどう使うか」を一緒に考えてもらいます。現場の実態を知っているからこそ、的外れのない運用ルールが生まれます。非公式リーダーが設計に関わることで、周りへの説明も自然にできるようになります。
師長との信頼関係を土台に、非公式リーダーを巻き込んだ運用設計をする。この流れが、現場定着の最も現実的な道筋です。
Medishift Designの詳細はこちら→メーカー向けサービス

