導入から3ヶ月が経った頃、田中さんは病棟で異変に気づきました。
熱心に使いこなしているスタッフがいる一方で、以前の運用に静かに戻っている人たちがいました。そしてある日、インシデントが起きました。報告書にはこう書かれていました。「新システムの操作に不慣れだったことが原因と考えられる」。
翌週から、病棟では新たなチェックリストと確認手順が追加されました。医療安全のためです。現場スタッフの仕事は、また一つ増えました。
3ヶ月。この時期に何が起きるかで、定着の行方が決まります。
導入後3ヶ月に何が起きるのか
導入直後、現場のスタッフは「とりあえず使ってみる」状態です。強制されているから使う。研修でやったから使う。でも「使いたいから使う」という段階にはまだ達していません。
この時期に、現場は静かに二極化していきます。
一方には、積極的に使いこなしていくタイプがいます。自分で工夫して、どんどん習得していきます。このタイプは放っておいても伸びます。
もう一方には、少しずつ元の運用に戻っていくタイプがいます。新しいことを覚えるのが面倒だと感じています。以前のやり方の方が早いと思っています。このタイプへの対応が、定着の鍵を握っています。
そして現場に余裕がなくなってきます。使いこなせていないスタッフが不安を感じ始める。小さなミスが増える。現場全体がシステムに対して慎重になりすぎる。結果として、元の運用に戻る人がさらに増えていきます。
この流れは3ヶ月以内に始まります。そしてベンダーは、その現場にいません。
黄金期を逃すベンダーの共通点
導入後3ヶ月に現場で何が起きているか、ほとんどのベンダーは知りません。理由はシンプルです。その時期に現場にいないからです。
導入が完了した時点で、ベンダーのサポートは薄くなります。「何かあればご連絡ください」という状態になります。でも現場は忙しい。問題があっても連絡する余裕がありません。使いこなせていないスタッフは、声を上げないまま元の運用に戻っていきます。
ベンダーは気づきません。問い合わせが来ないから「順調に定着している」と思っています。でも現場では静かに二極化が進んでいます。
そしてトラブルが起きたとき、初めて現場に来ます。でもその時点では、もう遅いことが多いです。現場のシステムへの信頼は、すでに揺らいでいます。
導入後3ヶ月は、ベンダーが最も現場にいるべき時期です。でも多くのベンダーが、その時期に現場を離れています。
では何をすべきか
二極化は防げません。仮の定着も起きます。それは現場の現実です。問題はそれが起きたときに、誰が何をするかが決まっていないことです。
だからこそ、導入前にサポート計画を立てることが必要です。
「導入後1ヶ月は週1回現場に入る」「2ヶ月目から月2回のモニタリングを行う」「使いこなせていないスタッフへの個別フォローは誰が担当するか」「現場から要望が出たときの対応フローはどうするか」。これらを導入前に現場と合意しておくことです。
現場の意向を聞きながら計画を作ることが大切です。病院によって、師長のスタイルも、スタッフの習熟度も、組織の文化も違います。どのくらいの頻度でサポートが必要か、どんな形の関与が現場に受け入れられるか。それは現場と話し合って決めるものです。
二極化や仮の定着が起きても、計画通りに動ける体制があれば対処できます。黄金期を逃さないための準備は、導入前から始まっています。
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