その日の提案は、いつもと違いました。
田中さんは製品の機能説明を最小限にして、代わりにこう伝えました。「導入後6ヶ月間、現場に伴走します。業務の棚卸しから運用設計まで、一緒にやります。半年後、現場のスタッフが『これがないと仕事にならない』と言える状態を目指します」。
事務長の表情が変わりました。「それ、具体的にはどういうことですか?」と前のめりになって聞いてきました。今まで何度も経験してきた「また検討します」という空気が、その場にありませんでした。
定着支援を提案に加えた。それだけで、商談の景色が変わりました。
なぜ定着支援がビジネスになるのか
定着支援をサービスにすることで、ベンダーとの関係が根本から変わります。
導入して終わりのベンダーは、次の契約まで病院との接点がありません。半年後、1年後に競合が現れたとき、また価格で比べられます。関係がリセットされるからです。
でも定着支援をするベンダーは違います。導入後も現場に関わり続けます。業務の変化を一緒に見ます。うまくいかないときも一緒に考えます。その積み重ねが、信頼になります。
信頼が生まれた病院は、次のシステムを検討するとき、真っ先にそのベンダーに連絡します。「また同じ人に頼みたい」という感情は、機能比較でも価格交渉でも生まれません。伴走した経験からしか生まれません。
定着支援は、コストではありません。次の10年の収益基盤です。
では何をすべきか
定着支援をサービスにしたいと思っても、一人ではできません。
定着支援の本質は、現場を知っていることです。看護師がどう動くか。師長がどこで判断に迷うか。現場のキーパーソンは誰か。変化への抵抗がどこから来るか。この知識はシステムの仕様書には載っていません。現場に入り続けた経験からしか得られません。
ベンダーが持っているのは製品の知識です。現場の知識ではありません。だから定着支援をサービスにするには、現場を知っているパートナーと組むことが最も合理的な選択です。
現場を知っているパートナーと組むことで、ベンダーは製品の価値を最大限に引き出せます。現場が変わる。変わった現場がベンダーへの信頼になる。その信頼が次の依頼につながる。
定着支援をサービスにした会社だけが、次の10年を生き残ります。
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