「研修をやりました」は定着じゃない──現場教育の設計を間違えているベンダーへ

「研修は実施しました」と担当者は言いました。

その日の病棟は、いつも通り慌ただしかった。研修は15時から始まりました。でも急患が入り、コールが鳴り続け、スタッフは入れ替わり立ち替わり席を立ちました。最後まで座っていられたのは、3人だけでした。

担当者は予定通り説明を進めました。画面の操作手順を一つひとつ説明しました。「ここをクリックして、次にここを選んで」。ベテランの看護師が「これ、今の記録とどう違うんですか?」と聞きました。担当者は「システム上では○○フローになっておりまして」と答えました。その看護師は小さくため息をついて、手元のメモ帳に何かを書き始めました。

研修終了後、担当者は「ご不明な点はありますか?」と聞きました。誰も何も言いませんでした。

研修はやりました。でも現場は変わりませんでした。


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「研修をやりました」が定着につながらない理由

研修をやっても定着しない理由は、研修の設計が間違っているからです。

全員が参加できていない 研修の回数が少なく、シフトの都合で参加できないスタッフが必ず出ます。参加できなかった人への対応が設計されていなければ、現場に知識の格差が生まれます。使いこなせる人と使えない人が混在する状態が、紙との併用を生みます。

忙しい時間帯に計画される 現場の業務の流れを理解せずに研修を計画するから、忙しい時間帯に被ります。参加できる人数が減ります。参加できても集中できません。

操作説明で終わる 「ここをクリックして、次にここを選んで」という操作の説明はできます。でも「なぜこう使うのか」「今までの業務とどう違うのか」「使うことで何が変わるのか」は説明されません。操作を覚えても、使う理由がわからなければ定着しません。

言語が通じない 担当者が使う専門用語やシステム用語が、現場スタッフには伝わりません。特に年長のスタッフは、わからない言葉が出てきた瞬間に拒否反応を示します。「自分には無理だ」と思わせた時点で、定着の可能性は大きく下がります。

現場の意見を聞かない 研修は一方通行です。担当者が説明して終わりです。「使いにくい」「この操作がわからない」という現場の声を拾う場がありません。問題が表に出ないまま、現場は静かに元の運用に戻っていきます。


では何をすべきか

操作説明は必要です。でもそれだけでは足りません。

まず現場の言葉で説明することです。「○○フローになっております」ではなく、「今まで紙に書いていたこの部分を、ここに入力するだけで済むようになります」という言葉で伝えます。「この操作をすることで、申し送りの時間が短くなります」というように、システム導入のミッションが現場に伝わる説明が必要です。

次に研修後にその場に残ることです。「しばらくここにいますので、何でも聞いてください」とナースステーションの近くに立つ。最初は誰も声をかけてこないかもしれません。でもそのうち、ちょっとした疑問を持ったスタッフが近づいてきます。その一対一のやり取りが、一番の教育になります。

そしてその時間には、もう一つの効果があります。声をかけられない時間に、現場のスタッフがどのように動いているかを観察できます。どのタイミングでシステムを使っているか。どこで手が止まっているか。誰が使えていないか。この観察が、次のサポートの設計につながります。

研修はゴールではありません。現場を知るためのスタートです。

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