電子カルテが導入されたとき、病棟は少し明るくなりました。
カルテの取り合いがなくなりました。いつでもどこでも記録が書けるようになりました。手書きの誤字もなくなりました。「便利になった」という実感は本物でした。
でも半年後、ナースステーションには相変わらず紙のバインダーが並んでいました。申し送りボードも残っていました。「システムに入れたけど、念のため紙にも残しておこう」という習慣が、なかなか消えませんでした。
あれから20年が経ちました。ツールは変わりました。でも現場で起きていることは、驚くほど変わっていません。
20年前に起きたことと、今起きていること
電子カルテが定着しなかった理由は、今も医療DXが定着しない理由と驚くほど似ています。
どこに何があるかわからない 電子カルテのどこに欲しい情報が入っているかを把握するのに時間がかかりました。慣れるまでの間、紙の方が早かった。今のシステムでも同じことが起きています。習熟するまでの「使いにくい期間」をどう乗り越えるかが、定着の鍵を握っています。
システム内での転記が発生する 電子カルテに入力したのに、別の画面にも同じ内容を入力しなければならない。効率化のはずが、手間が増えました。今のシステムでも、連携が不完全なために転記が発生しているケースは珍しくありません。
ミス防止という名目の紙運用 「システムに入れたけど、念のため紙にも残しておこう」。ミスを防ぐという正当な理由のもとに、紙運用が横行しました。今のシステムでも、同じ理由で紙との併用が続いています。
端末が足りない 電子カルテの端末が十分にない施設では、使いたくても使えない状況が生まれました。今のシステムでも、デバイスの数が定着の障壁になっているケースがあります。
20年前も今も、問題の本質は変わっていません。ツールが変わっても、現場の構造は変わっていないからです。
なぜ20年経っても変わらないのか
理由はシンプルです。ツールは変わっても、導入の構造が変わっていないからです。
メーカーにとって、システムを入れることがゴールです。契約が取れた。導入できた。これで仕事は終わりです。
でも現場にとって、導入はスタートです。新しいツールをどう使うか。業務フローをどう変えるか。スタッフをどう巻き込むか。導入後にやるべきことが山積みになっています。
電子カルテのときも、この構造は同じでした。メーカーは導入を終えて去っていきました。現場は自分たちで「回る方法」を見つけました。紙との併用が生まれました。それがStage3の正体です。
20年後の今も、同じことが繰り返されています。ツールがタブレットになり、AIになり、IoTになっても、「導入したらゴール」というメーカーの姿勢が変わらない限り、現場での定着の問題は解決しません。
歴史は繰り返されています。そしてその繰り返しを止めるために、定着支援という専門領域が存在しています。
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