師長の田村さんは、その担当者が来るたびに小さくため息をつきました。
「先生、少しお時間よろしいでしょうか」。忙しい午後の病棟に、笑顔で現れます。「サポートに来ました」と言いながら、アンケートへの記入を求めます。「ご不明な点はありますか?」と聞きながら、こちらの質問には「確認して折り返します」と言うばかりです。
また来た。田村さんは心の中でそう思いました。
「また来てほしい」と思う担当者と、何が違うのか。その答えは、現場への理解の深さにあります。
「また来た」と思われる営業の特徴
現場から歓迎されない営業には、共通したパターンがあります。
現場がわかっていない 「このシステムを使えば業務が効率化されます」と言いながら、今その病棟がどんな業務フローで動いているのか知りません。的外れな提案をします。現場スタッフは「この人、うちのことを何もわかっていない」と感じます。
サポートと言いつつ業務を押し付ける 「サポートに来ました」と言いながら、アンケートへの記入、データの入力、資料への署名を求めます。現場の負荷を減らすために来たはずが、仕事を増やして帰っていきます。
メーカー本位の業務しかしない 訪問の目的が現場のためではなく、自社のノルマや報告のためです。現場が何に困っているかより、自分が何を持ち帰らなければならないかを優先しています。それは現場に伝わります。
質問にすぐ答えられない 「それは確認して折り返します」が口癖です。現場は忙しい。次の返答を待つ余裕はありません。答えられない担当者への信頼は、訪問を重ねるごとに薄くなっていきます。
「また来てほしい」と思われる営業の特徴
現場から歓迎される担当者には、共通した特徴があります。
現場の状況がわかっている 今その病棟が何に困っているのか、どんな業務フローで動いているのかを理解しています。だから提案が的外れになりません。メーカーが看護師出身の担当者を採用する理由がここにあります。ただし現場経験はあっても、管理職としての経験がない場合は、組織全体の視点や経営的な判断が見えにくいという限界もあります。
どう工夫すればうまく使えるかを教えてくれる 「このシステムはこう使ってください」という説明ではなく、「この病棟のやり方に合わせるなら、こう使うと効果的です」という提案ができます。現場に合わせた使い方を一緒に考えてくれる担当者は、現場から信頼されます。
現場の声を十分聴いてくれる 訪問のたびに「今、何が困っていますか」と聞きます。そしてその答えを持ち帰って、次の訪問までに何らかのアクションをします。聴くだけでなく、動く。それが信頼につながります。
3ヶ月でどう変わったかをデータで教えてくれる 「導入から3ヶ月で、申し送りの時間がこれだけ短縮されました」というデータを持ってきます。現場スタッフの「やってよかった」という実感になります。経営者への報告材料にもなります。数字で変化を示せる担当者は、次の提案も聞いてもらえます。
では何をすべきか
「また来てほしい」と思われる担当者になるための近道はありません。でも始まりはシンプルです。導入前から、現場と良好な関係を築くことです。
導入前の訪問から、現場の声を聴きます。困っていることを理解します。的外れな提案をしません。業務を押し付けません。質問にはその場で答えられるよう準備します。
この積み重ねが、導入時の現場の受け入れ方を変えます。「また来た」ではなく「来てくれた」という空気が生まれます。導入後のサポートも、歓迎されます。
信頼は導入後に作るものではありません。最初の訪問から始まっています。そして現場との関係が深まるほど、定着の可能性は高くなります。
現場を知っているパートナーと一緒に動くことも、その近道の一つです。現場経験を持ちながら、管理・経営の視点も持つ人間が間に入ることで、現場とベンダーの距離が縮まります。
もちろん、製品の質が大前提です。どれだけ関係が良くても、使いにくいシステムは定着しません。その点は否定しません。
ただ、製品の質が同等であれば、最後は関係性で決まります。「あの担当者なら信頼できる」「あの人が来てくれるなら安心だ」という感情は、機能比較では生まれません。導入前からの積み重ねからしか生まれません。
製品の質と現場との関係性。この両方が揃ったとき、「また来てほしい」という信頼が生まれます。
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